AUTO-TUNE PRO:ボーカルのピッチを修正する4つの手順

「ボーカルのピッチ修正」に、今どきプロのスタジオや技術など必要ありません。Auto-Tuneの他、初歩的なEQ、コンプの併用も含め、初心者でもすぐにマスターできる4つの手順を紹介します。

「下手なボーカル」の原因を特定する

「下手に聴こえる歌」にもいろんな原因があります。

いわゆる「音痴」でピッチがズレている場合をはじめ、リズム感の欠如からタイミングが合っていない場合、マイクの使い方のせいで音量がデコボコな場合、声の出し方に問題があって音が全体的に細く不安定な場合、などなど。

場合によっては、全部の組み合わせという事も珍しくありませんね。

ボーカルのピッチ修正:Antares Auto-Tune Pro 画面
“Auto-Tune 8″の後継として2018年4月にアップデートされた最新版の”Auto-Tune Pro”。見た目が大幅に変わり、インターフェイスとしての使い勝手・機能面でも、大きく進化したといえる。

Auto-Tune Proはピッチ補正ソフトとして、ボーカルに関する多くのトラブルを解決してくれます。

しかし、下手に聴こえるボーカルであるからには、やはりそれなりに理由があり、大方の場合はピッチだけ直して「解決しました」とはならないものです。となると、どうしてもEQやコンプなども併用した包括的なアプローチを取らなければ、結局、目指す「完成品」にはうまく辿り着くことができません。

こうした「マイナスをゼロに戻す作業」は、本来極めて事務的で、クリエイティブな面白味は全くないものですが、その分難易度も低く、基本的にはマウスとマニュアルさえ使えれば、どこの誰にでも自宅でこなせる簡単な内職みたいなものです。熟練した耳も腕も、一切必要ありません。

マウスを進呈する事はできませんが、この記事は簡単なマニュアルを用意するつもりで書いてみました。

いずれ、こうした作業自体がボタン一発で済む様な時代がくると思いますが、それまでの繋ぎという事で、やり方を知っておいても悪くは無いでしょう。

関連記事:耳に痛いボーカルをミックスで改善する方法

1:EQとコンプを使った下地作り

まず最初に知っておくべきこととして、Auto-Tuneをはじめとするピッチ修正ソフトは、入力段階でトラックのピッチを分析しています。

ピッチ編集が上手くいかない原因の一つは、この入力段階における音程の分析が、何らかの理由で上手くいっていない事が考えられますので、まずAuto-Tuneを通す前の段階で、音声ファイル自体の音質を、ある程度整えておく必要がある訳です。

下地作り①:EQによる不要な帯域のフィルター

女性・男性ボーカルに関わらず、まず最初にする事は、不要な周波数帯域のフィルターです。これをする事で、ピッチの検知にジャマとなる低帯域のノイズを取り除くことができ、問題を一つ回避する事ができます。

今回は40Hz付近をターゲットに、ハイパス・フィルターを掛けました。フィルターのQは12~18dB/Octave位に設定するといいでしょう。

ピッチ修正の下処理:"EQ3"によるボーカルのハイパス処理
EQによる40Hzのハイパス・フィルター。今回はProTools のストック・プラグイン”EQ3″を使用したが、種類は何でも良い。

通常、50~60Hz以下の帯域で、ボーカルにとって有益な情報が含まれているケースは稀です。

大体の場合は、マイクが拾ったノイズが人間の可聴範囲外でブンブン鳴っているだけなので、排除した後でも音質の変化はほとんど感じない筈です。

注意すべき点としては、むしろ「フィルターの使い方」で、40Hzのハイパス・フィルターによって、40Hz以上の帯域がどのくらい影響を受けたのか、という事に注意を注ぐ様にしてください。言葉では分かりづらいと思うので、図を見てください。

12dB/octと16dB/octのハイパス・フィルターの違い
上は”Q=12dB/oct”、下は”Q=16dB/oct”の設定で40Hzのハイパス・フィルターを掛けた状態。

見落とされがちな点ですが、Q=12dB/octの時で80Hz付近まで、Q=16dB/octの時で60Hz付近まで、それぞれハイパス・フィルターの影響が及んでいます。

60Hz~100Hzの帯域には、ボーカルにとっても大切な情報が含まれています。もし何かが損なわれたと感じる様なら、補うようにしましょう。

ボーカル処理:40Hzハイパス+ピークブースト
40Hzのハイパスでカットされた情報を、わずかなピーク・ブーストによって補填。

ちなみに、フィルターの挙動はEQの種類ごとによって異なりますので、値が同じだからと言って過信しない様にしましょう。

Universal Audio "Cambridge EQ"におけるQ=12dB/octのハイパス・フィルター
Universal Audio “Cambridge EQ”のQ=12dB/octは、ProToolsの”EQ3″とはまったく挙動が異なる。

下地作り②:コンプによる音量のデコボコならし

Auto-Tuneに通す前に音の粒をある程度整えておくことで、ピッチの検知漏れを防ぐことができ、その分、求める結果も得やすくなります。

EQで不要な帯域にフィルターを掛けた後、-1~-5dBを目安に、緩やかなゲイン・リダクションを施しましょう。

この仕事に適したプラグインの種類としては、”UREI 1176″や、”LA2A”などのアナログ回路をエミュレートしたものですが、もし手元にない場合は、DAWに付属してくるストック・コンプでも全く構いません。

その場合のレシオは1.5~2:1程度。KNEEの設定もある様なら最大値にして、アタックやリリースの設定がよく分からなければ、下手に手を出さず、デフォルトの値で放っておくのも一つの手です。

もしアナログ・コンプのアタック・リリースタイムをエミュレートするのであれば、参考までに”UREI 1176″のアタック値は0.02ms~0.8ms、リリース値は50ms~1100ms(1.1秒)、LA-2Aのアタック値は大体平均で10ms位、リリース値は500ms~5000ms(5秒)程度です。

ちなみに、0.02msというのは、20μsと同じ事です。μsは「マイクロ秒」と読みます。

関連記事:コンプレッサーの使い方:アタック・リリースと音の関連性

ピッチ修正前の下処理:ボーカルのコンプ処理
Pro Toolsのストック・プラグイン”Dyn3 Compressor/Limiter”であれば、”KNEE 30″ “RATIO 2.0:1″に設定し、アタックとリリースは放っていても、スレッショルドを下げ過ぎなければ、とんでもない結果にはならない。

一般的な素材であれば、EQ、コンプによる下準備はこんな所です。

関連記事:コンプレッサーの使い方:目的別スレッショルドとKNEEの設定方法

2:ピッチ修正前のAuto-Tune設定

では、次にピッチ修正前の、Auto-Tuneの設定に取り掛かります。

Auto-Tune Proをトラックに挿入すると、最初にこんな画面が立ち上がります。

ボーカルピッチ修正ソフトAntares Auto-Tune Pro 初期画面
Auto-Tune Proの初期画面。

“INPUT TYPE”の設定

まず最初に、画面一番上のツールバーの様な所に「INPUT TYPE」と書かれた所があるので、クリックしましょう。

ここで選んだ選択肢に従って、Auto-Tuneは音程を分析する事になります。

Auto-Tune Pro : INPUT TYPE
正しい「INPUT TYPE」を選択する事で、ピッチの検知精度が上がる。

もし声の高い女性なら「SOPRANO」を、声の低い女性か、普通の男性なら「ALTO/TENOR」、声の低い男性なら「LOW MALE」を選びましょう。

重要な項目ですが、低い・高いの判断は直感で構わないので、適切と思うものを選んでください。適当に変えてみて、一番反応の良いものを選択するのでもいいですね。いずれにせよ、この設定はいつでも好きな時に変更できます。

「Auto-Key」を使った楽曲のキー判定

次に、楽曲のキー(調性)の設定を行いましょう。

すでにキーが分かっている場合は、画面上部の「KEY」「SCALE」と書かれた所から、それぞれ該当するものを選択します。

Auto-Tune Pro : KEY and SCALE
「SCALE(音階)」は、通常”MAJOR”か”MINOR”で問題ないが、転調を繰り返すなどイレギュラーな事情がある場合は”CHROMATIC”を選んだ方が良い場合もある。

もし「楽曲のキーが分からない」という場合は、Auto-Tune Proと一緒に自動でインストールされる「Auto-Key」という便利なプラグインがあるので、それを使いましょう。

Auto-Keyは「Auto-Tune Pro」になってから登場した新機能で、挿入した状態でトラックの再生を始めると、自動で曲のキーを判定してくれる至れり尽くせりのプラグインです。

時代は着実に革新性を増していますね。Auto-Tune 8までは、こんな機能はありませんでした。

ボーカルの音程修正:AUTO-KEY の調整判定
Auto-Tune Proから新導入された”Auto-Key”。転調などしないシンプルな曲であれば、ほぼ100%の確率で正しい調性を教えてくれる。

キーの判定が終わったら、Auto-Keyの中央にある「Send to Auto-Tune」ボタンを押下すると、判定したキー情報をそのままAuto-Tune Proに送信してくれますので、Auto-Tune側での設定の手間も省けます。

ちなみに、「Send to Auto-Tune」機能を使う時は、ボタンをクリックする前に、すでにAuto-Tune Proがプラグインとしてトラックに挿入されている必要があります。

もしAuto-Tuneが挿入されていない状態で「Send to Auto-Tune」ボタンを押しても、何も起こりません。

Auto-Keyに外部ファイルを読み込む事でも、調性を判定できる

Auto-Keyの左側にある「File…」ボタンをクリックすると、任意のフォルダにあるオーディオ・ファイルを選択できるウインドウが開きます。

この時、適当なファイルを指定すると、そのファイルの調性判定が自動的にはじまり、ゲージが「100%」になると、同じように判定結果が中央の画面に表示されます。

ピッチ修正の下準備:AUTO-KEYによる外部ファイルのキー判定
判定に要する時間はファイルサイズにもよるが、通常は一瞬から数秒で完了する。

もちろん、判定された結果は「Send to Auto-Tune」ボタンで、Auto-Tuneに送信する事も可能です。

Auto-Tune側にキー情報を送信した後は、Auto-Keyはもう必要ないので、プラグイン欄から削除してしまっても構いません。

3:Auto-Tune Proでのマニュアル・ピッチ修正

いよいよピッチ修正です。Auto-Tune Proでピッチ修正をするやり方には、大きく分けてオートマニュアルの2通りがあります。

とは言いつつも、ある程度使える品質を求めるとなると、オートでは「細かさ」という点で事足らず、最終的には結局マニュアルモードでの修正に頼らざるを得ません。一応オートというオプションは用意されていますが、お試し程度のものと考えた方が良いでしょう。

Auto-Tune Proを立ち上げると、初期状態では、まずオートの画面が表示されますので、画面上部にある「AUTO/GRAPH」スイッチを一度だけ押下し、マニュアル画面を表示させましょう。

マニュアル・モードによるボーカルのピッチ修正
AUTO/GRAPHスイッチを押下すると、オート/マニュアルの画面が交互に切り替わる。

なお、Auto-Tune Proではマニュアル・モードの事を「グラフ(GRAPH)モード」と表現しています。前は「グラフィック(Graphic)モード」という名前でした。

“PITCH”/”PITCH+TIME”:メイングラフへのピッチ情報の読み込み

GRAPHモードに遷移して最初にやる事は、画面中央のスペース(メイングラフ/MAIN GRAPH)に、ターゲットとなるオーディオ・ファイルのピッチ情報を表示させる事です。その為には、Auto-Tuneにピッチ情報を取り込む必要があります。

まず、画面上部左側にある「PITCH」または、「PITCH+TIME」のいずれかをアクティブにし、DAW側でオーディオの再生を始めましょう。

PITCH:ピッチ補正だけを行う時

PITCH+TIME:ピッチ補正とタイミング補正を両方行う時

この時、メイングラフに、ピッチ修正をしたい範囲が描画されればOKです。特に必要が無い限り、全範囲を最初から最後まで再生する必要はありません。

ピッチ修正の為のボーカルファイル読み込み
ピッチ情報をメイングラフに描画中の様子。ピッチ補正と同時にタイミング補正もするには、この時”PITCH+TIME”モードで情報を取得する必要がある。

「PITCH+TIME」を選択して情報を取り込むと、ピッチだけでなく、タイミングの補正も行えるようになりますが、オリジナルのオーディオ・データとは別のコピーがAuto-Tune Pro内部に一時的にセーブされます。これは、元のデータに影響を与えない「非破壊編集」を担保する為なので、もしタイミング補正を行う予定が無い場合は、「PITCH」を選択した方がマシンへの負荷を軽減する為には良いでしょう。

メイングラフに赤で示されたものが現在のピッチです。この赤の音程を希望の音程(緑)に変えていく事が、これからの目的です。

ズームツール:作業スペースの視認性を調整する

ここで一旦、今後の作業をやりやすくする為に、メイングラフに表示される波形の範囲を変える方法を知っておきましょう。

ツールボックスの右から5番目にある「虫眼鏡」のアイコンをクリックすると、マウスポインタが「ズームツール」に変わります。この状態で最初にピッチ修正したい波形の範囲をドラッグで囲み、離しましょう。

ピッチ修正画面の視認性向上:ズームツール
波形が拡大された状態。ズームツールは、Windowsなら「Ctrl」キー、Macなら「Command」キーを押すと、ズームアウト(縮小)する事ができる。

ドラッグで囲んで離した部分が、画面いっぱいに拡大されました。

範囲の微調整は、ズームツールを使わなくてもメイングラフの左横や真下に表示されている「<>」や「+-」でも行う事ができます。作業効率に関わるので、表示範囲は必要に応じてどんどん変えていきましょう。

ラインツール:修正先となる音程を指定する

では、いよいよピッチ補正の作業に取り掛かります。現在の音程(赤)の上に、希望とする修正後の音程(緑)を作っていくためには、「ラインツール」を使い、本来あるべき音程を線(青)で書き込んでいきます。

ツールボックスの一番左に位置するアイコンが「ラインツール」です。

Auto-Tune Pro : ラインツール
ラインツールを選択した状態でメイングラフに直線を書き込むと、その線に従って補正されたピッチが緑色で表示される。
【補足】
修正曲線を直接フリーハンドで書き込める「カーブツール」も用意されているが、正確な音程の描写には向かない為、今回は使用しない。

ラインツールを選択したら、修正したい箇所に対して、適切な音程の高さで、音符の長さだけ線を引きます。

ラインツールの使い方ですが、メイングラフ上を一度クリックすると、線分(青)のスタートとなるアンカーポイントが出現し、線分の終点となる部分でもう一度クリックすると、音程の線分が仮描写されます。描いた線を確定するには、キーボード上の「Escキー」を押すか、最後のアンカーポイントを決定する時に、ダブルクリックします。

ボーカルの音程修正: ラインツールと補正後の音程(緑)
ラインツールで描写した線分(青)を基準に、補正後の音程(緑)が表示されている。

青色の線分の描写が完了すると、その音程を基準として、赤を修正した音程(緑)が表示されます。DAW側でトラックを再生して、試しにピッチ補正の結果を聴いてみましょう。

なお、青の描写に失敗した場合は、ツールボックスの左横にある「UNDO」ボタンをクリックする事で、最大20ステップ前まで動作を巻き戻すことができます。

もしくは、ツールボックスの中の「矢印ツール」で失敗した線分(青)を選択し、「SELECT ALL」のすぐ左側にある「ハサミ」アイコンをクリックすると、失敗した部分を「切り取る」事もできます。

「ハサミで削除」というのも妙な感じですが、Auto-Tuneにはよくある「消しゴムツール」的なものはありません。これはなぜか昔からの仕様で、どうゆう訳かそういう事になっています。

多少クセのある操作感ですが、慣れる他ありません。

RETUNE SPEED:ピッチ補正の強さを調整する

次にやる事は、RETUNE SPEEDの調整です。

RETUNE SPEEDとは、入力信号に対して「ピッチが検知されてから補正がはじまるまでの時間」で、0ms~400msの間で自由に調整する事ができます。

ピッチ修正までのかかる時間の設定
一番緩やかな設定(400ms)にすると、ピッチ補正は元の赤い線と重なり、逆に0msにした場合は、青い線分とピッチ補正の結果である緑の線分がイコールになる。

オートモードではRETUNE SPEEDはすべてのピッチ補正に対して一律の値しか指定できませんが、グラフモードでは、ラインツールで描写した線分ごとに、個別の値を設定する事ができます。

RETUNE SPEEDは、値が0msに近づくほどピッチ修正の効き方が極端になり、いわゆる海外での「T-Pain Effect」、日本でいうところの「ケロケロボイス」的な感じに近づいていきます。

「CLASSIC」機能
Auto-Tune Proから新しく搭載された「CLASSIC」スイッチをアクティブにすると、熱心なファンの多い「Auto-Tune 5」のアルゴリズムが再現され、RETUNE SPEEDを0msに近づけた時のサウンドがを、より一層Auto-Tune 「らしく」する事ができる。

典型的な意味での「自然な」ピッチ修正効果を得るには、「RETUNE SPEED」を大体50ms位の値でスタートし、目指す結果によって値を前後させていくのが普通ですが、元の歌があまりに酷い場合は自然さを残しても意味が無いので、元のボーカルによって当たりを付けると良いでしょう。

個別の線分を選んでいくには、ツールボックスにある「矢印ツール」を使います。

より自然なピッチ修正を実現するためのコツ

ラインツールでピッチ補正の音程を指定する時、音符の出だし部分と終わり部分を残して線を引くことで、より自然なピッチ修正効果を得ることができます。

自然なピッチ補正に必要なコツ
音符の最初と最後を避けてピッチ補正する事で、より自然な結果を得ることができる。

音符の歌い出しと歌い終わりは、息の量などでボーカリストの個性や感情表現が出やすい部分でもあるので、ピッチのズレを完璧に補正してしまう事で、かえって自然な人間味が損なわれ、味気なさや不自然さが目立ってしまう事があります。

この処理を行う事で、元々質の良いボーカルであれば、より一層自然さが増して良くなる傾向が強い一方で、そもそも人間味云々を語る以前という様な救いようのないパフォーマンスの場合は、敢えて気にする必要はありません。

状況に応じて、効果的と考えられる場合は、適用するようにしましょう。

4:Auto-Tune Proでのタイミング補正

さて、最後はAuto-Tuneでのタイミング修正です。

ボーカルのタイミング補正は何通りもやり方があり、DAWのクオンタイズ機能や、直接オーディオファイルを切って動かす方法、Melodyneといったソフトを駆使するなど、方法は本当に人それぞれです。

そんな中で、Auto-Tuneを使ってボーカルのタイミング修正をするやり方は、どちらかと言うと恐らくメジャーな方法ではありませんが、個人的にはAuto-Tune Proでオーディオ・ストレッチをした時のクオリティは優れていると思いますので、一応最後にやり方を紹介しておきます。

ピッチ+タイミング情報の読み込み

まず、手順3で触れた様に、Auto-Tuneでタイミング修正を行うには、ボーカル・データを読み込む段階で「PITCH+TIME」をアクティブにしておく必要があります。

既に「PITCH」モードでデータを読み込み済で、かつ、ピッチ補正も随分進んでしまったという場合、「PITCH+TIME」モードで再度ボーカル・データの情報を上書きしても、ピッチに関するエディット情報はそのまま残りますので、安心して再読み込みを進めてください。

また、グリッドのタイプを「Bars+Beats」にしておくと、タイミング修正の作業がやりやすくなるでしょう。やり方は、画面左上の「Antares」ロゴの真下にある「SETTINGS」→「TIME DISPLAY」→「PITCH+TIME」と選びます。

Move Regionツール:特定範囲を、指定の範囲内で移動させる

「Move Regionツール」は、ボーカルのある区間がそっくりタイミングを逃しているときの修正に役立ちます。

手順としては、まず「Move Regionツール」で外側の範囲を指定します。

タイミング補正:Move Region
「Move Regionツール」最初の範囲を選択した所。範囲が薄紫色になっている。

次に、先程選択した範囲の内側で移動させたい区間を選択します。

Auto-Tune Pro : 自然なタイミング補正
最初に選択した範囲内で、移動させたい区間が水色で選択されている。

最後に、二回目に選択した水色の部分を、一回目に選択した薄紫色の範囲内で任意の場所に移動させます。

自然なボーカルのタイミング修正
薄紫色の範囲内で、水色の区間を自由に動かせる。

Move Pointツール:特定のポイントを、指定の範囲内で移動させる

「Move Pointツール」は、ボーカルのあるポイントの位置は保ったまま、別のポイントを移動させたい場合に役立ちます。

まず最初に、「Move Pointツール」で任意の範囲を指定します。

Move Point によるボーカル修正
「Move Pointツール」で任意の範囲を指定すると、その区間は薄紫になる。

次に、動かしたいポイントの先端にカーソルを合わせ、希望のポイントまでドラッグします。

今回は、あるフレーズの歌い出しのタイミングはキープしたまま、フレーズの切れぎわを短く縮めます。

ボーカルのタイミングを縮める方法
フレーズの最後の部分をクリックし、薄紫の区間内で任意の箇所までドラッグすると、フレーズの頭の位置は影響を受ける事無く、切れ際のタイミングを縮めることができる。

Move Pointツールは、ある区間内で特定の場所がハシっていたりモタっていたりする場合でも、前後のタイミングを変える事なく、真ん中だけのタイミングを任意に調整する事ができます。

何かが上手くいかないとき

Auto-Tuneは入り口でピッチの分析をしている分、元の音質によってはピッチの検出が正しく行われないことがあります。

そんな時、「Auto-Tuneはダメだ、Melodyneなら何とかなるかも」とか「Waves Tuneを試してみようかな」とか、うまくいかない理由をソフトに転嫁してしまいがちですが、基本的にピッチ修正ソフトはどこのものを買っても、そんなに大きな差はありません。

Melodyneで全く何ともならないものがAuto-Tuneで魔法の様に片付くという話もそうはありませんし、ソフトというよりも、多くの場合は大元のボーカル・データに問題がある事がほとんどです。

同じように、高価なマイクや高価なプリアンプを使っていないからうまくいかないという事もなく、iPhoneで録音された素材だとしても、プラグインでそれなりの下処理を施せば、まあまあ使える位の品質にまで持っていく事は可能です。

Auto-Tuneに通す前に、まず素材をしっかりとした音質に仕上げる事ができれば、ピッチ修正の段階で何かが問題になる事はほとんどありませんので、まず手元にあるEQ、コンプと相談しながら、無いものは補い、過剰なものは削るという事を優先してみてください。