Auto-Tune 8 の使い方

ボーカル補正やエフェクト・ボイスで有名な「Auto-Tune 8」。すぐれたソフトですが、操作方法にややクセがあるのも事実です。2つのモード、「オート」と「グラフィック」の使い方を、初心者にも分かりやすく解説します◎

Auto-Tune 8で、ボーカルのピッチを補正する方法は、大きく分けて2つあります。

「オート」
・ボーカルトラック全体をひとまとめにしてチューニングする方法

「グラフィカル」
・ボーカルトラックに含まれる一つ一つのノート(音符)に対して、個別にチューニングする方法

具体的なやり方を見ていきましょう。まずはオートから。

関連記事:AUTO-TUNE PRO:ボーカルのピッチを修正する4つの手順

Auto-Tune 8:オート(Auto)モード

手順

「Auto」モードの設定はカンタンです。

Auto-Tune 8の画面には、たくさんのパラメーターやノブがあるので、一見難しそうに感じがちですが、基本的なピッチ操作に必要なノブは、いくつもありません。

①「Input Type」と「Key/Chromatic」で入力信号の設定

②「Retune Speed」と「Correction Style」でピッチ補正

③ビブラートの状況を見て、「Targeting Ignores Vibrato」を使うか決める

これに加えて、必要であれば「Tracking」「Humanize」の数値を変える場合もありますが、ほとんどの場合は3つのステップで完了です。

これで良い結果が得られない場合は、後ほど説明する「グラフィカル・モード」で、より精密なエディットをすることになります。

各コントロールの役割を見ていきましょう。

Input Type

Auto-Tune-8の使い方-Input Type
「Input Type」の設定は、「Auto」「Grapiycal」の両方に適応される共通項目。

「Input Type」の選び方によって、Auto-Tune 8が音をどう分析するかが決まります。

ソプラノ、アルトなど、クラシック音楽で使う音域について神経質になる必要はありませんが、常識的な範囲で適切だと思うものを選んでください。

たとえば、女性ボーカルの中でも高そうな声であれば「Soprano」、低い女性ボーカル、もしくは、高めの男性ボーカルあれば「Alto/Tenor」、それよりも低ければ「Low Male」を選択すると良いでしょう。

中でも、「Bass Inst」は楽器のベースをターゲットに沿えた設定で、低域に対して感度が集中している分、高域に対する精度が、他のモードよりも劣ります。

人間の声に対して間違って「Bass Inst」を選ぶと、Auto-Tune 8が正しく音を分析できない可能性がありますので、気を付けましょう。

Soprano 音域の高い女性ボーカル
Alto/Tenor 音域の低い女性ボーカル、男性ボーカル
Low Male 音域の低い男性ボーカル
Instrument 楽器
Bass Inst ベースなどの低音楽器

「Input Type」での設定は、「Auto」と「Graphical」の両方において、共通で適用されます。

Tracking

Auto-Tune-8の使い方-Tracking
「Tracking」も「Input Type」と同じく、「Auto」「Grapiycal」の両方に適応される共通項目。

「Tracking」は、通常であれば、デフォルト値である「50」で問題ありません。

これは「音の連続性をどのくらい厳密に判定するか」という項目で、ノイズの多い信号であったりする場合は、この値が小さすぎると、Auto-Tune 8が入力信号の音程を正しく判定できない場合があります。

そんな場合は、値を上昇させて「Relax」に近づけていくと、良い結果が得られる場合もありますが、逆に、ディストーションが起こる事もありますので、注意して設定する様にしましょう。

Key/Scale

Auto-Tune-8の使い方-スケール
いろいろなスケールがあるが、基本的には「Major」「Minor」で対応し、こぼれた音程については、グラフィカル・モードで個別に設定する、という手もある。

「Key」「Scale」では、楽曲が使用している音階を指定します。

ここで指定した音階以外はスルーされるため、Auto-Tune 8の補正がより正確になります。

たとえば、Gメジャーの曲であれば、「Key」で「G」を、「Scale」で「Major」を選択します。これで、たとえば「G#」といった音程はAuto-Tune 8の射程から外れるので、結果がより正確になります。

「Chromatic」は全音程を射程に入れる設定ですが、音程をまったく制限しない分、ビブラートなどの揺れで半音関係などの望まない補正が掛かるなどのデメリットがあります。

また、音階を指定する方法以外に、更に音程の射程を狭める方法が用意されています。

Auto-Tune-8の使い方-Remove/Bypass
「Remove」はピッチ合わせの照準に、「Bypass」は入力音に関係している。

この中央の画面で、「Remove」と書かれた任意の音程を点灯させると、Auto-Tune 8は、その音程にピッチを合わせなくなり、逆に「Bypass」と書かれた任意の音程を点灯させると、入力段階でその音がAuto-Tune 8に検出されなくなります。

ピッチ補正コントロール

「Auto」モードでキーとなるのは、以下の四つのコントロールです。その他のノブは、とりあえずデフォルト状態にしておきましょう。

Auto-Tune-8の使い方-Pitch Correction Control
Pitch Correction Control内で、もっとも重要性が高いのは、「Retune Speed」と「Correction Style」。

「Retune Speed」

ピッチ補正の速さを調整します。「0」を選ぶと即座に音程の補正が行われ、数値を上げて行くにしたがって、補正の速度が緩やかなになっていきます。

「Retune Speed」の単位はms(ミリ秒)です。

自然なボーカル補正を目的とする場合は、「10~50」の範囲で調整するのが典型的ですが、元のボーカルによって最適な値は異なります。

「Correction Style」

Auto-Tune 8の感度を調整します。常にピッチ補正がなされるのが「Classic」で、「Flex-tune」から「none」に近づくにつれ、照準から遠い音に関しては効き方が柔らかくなり、最終的に「none」では、まったくピッチ補正が行われなくなります。

わざと機械的な声を強調するエフェクトボイスを目指す場合は「0」に設定すると良いでしょう。逆に、ボーカリストの歌唱ニュアンスを残したいという場合は、「45~65」位の値で合わせるのが一般的です。

「Humanize」

このコントロールは「Retune Speed」の補完的な役割を担っていて、値が大きいほど、音のサスティンに対するピッチ補正速度が遅くなります。

どういう時に役立つのかと言うと、短い音符と長い音符が混在する楽曲で、短い音符のピッチ補正を基準に「Retune Speed」を設定した場合、長い音符にとっては設定が速すぎて、不自然な音になる場合があります。

こういう時、「Humanize」の値を上げて行くと、短い音と長い音の両方に対して有効な折衷ポイントを探す事ができます。

「Targeting Ignores Vibrato」

点灯させると、Auto-Tune 8がビブラートに対してピッチ補正をしなくなります。

長い音符などのビブラートで望まないピッチ補正が発動して不自然な結果になる場合、このボタンを点灯させると、問題が改善する場合があります。

ボーカルの空間を大きくする:リバーブとディレイの応用法

Auto-Tune 8:グラフィカル「Graphical」モード

ここからは、autoモードよりもより詳細なピッチ補正モード、グラフィカル・モードの説明に入ります。

「Auto」と「Graphical」の切り替えは、Auto-Tune 8画面右上にある「Auto/Graph.」ボタンを押すだけです。

Auto-Tune-8の使い方-Correction Mode
Auto-Tune 8立ち上げ時は、「auto」モードが開かれている。

グラフィカル・モードでピッチ補正をするやり方を、手順ごとに追ってみていきましょう。

1.Auto-Tune 8へのオーディオ・データの読み込み

ピッチを補正したいオーディオの入ったトラックに、Auto-Tune 8を挿入します。

「Auto/Graph.」ボタンで「グラフィカル・モード」に移行したら、画面左下にある「Track Pitch」ボタンを点灯させ、DAW側でオーディオを再生させます。この時、ピッチ補正したい箇所の前後だけを再生するのでも構いません。

Auto-Tune-8の使い方07-オーディオ読み込み
Auto-Tune 8がオーディオ・データを読み込んだ所。赤い曲線が補正前のピッチ。

波形画面に、読み込んだ波形データの形と、赤いピッチ曲線が表示されました。

「Time Display」ボタンを使うと、Auto-Tune 8の波形用画面のグリッドを「秒」から「小節」刻みに変更する事ができます。好みによって、使い分けましょう。

Auto-Tune-8の使い方08-グリッド
Auto-Tune 8の画面に表示される「秒」や「小節」のグリッドの位置は、DAW側とリンクしている。

Auto-Tune 8の波形画面の解像度

グラフィカル・モード中央に表示されている波形用画面の左下にある「Auto Scroll」ボタンが点灯していれば(デフォルト=ON)、オーディオ・データの読み込みで、DAW側の再生を止めた瞬間、読み込んだ範囲に合わせて、グラフィカル・モードの波形用画面が適切な解像度に自動調整されます。

もし、画面の表示範囲を変えたい時は、虫眼鏡ツールを選択し、画面上で表示したい範囲をドラッグで囲むと、離した瞬間に、画面の解像度が選択範囲に合わせて再調整されます。

2.「直線ツール」を使ってピッチ補正する方法

Auto-Tune-8の使い方-直線ツール
直線ツールは、希望する補正先の音程を、直線で直接画面上に書き込むことができる。

直線ツールを選んだら、波形画面上の適当な位置をクリックして、線分を書き込みます。

ペイントと同じ要領でカクカクと線を描写して行けば良いのですが、一番最後に終わりたい時は、「Esc」キーを押します。Auto-Tune 8のグラフィック・モードはクセのあるインターフェースですが、この動作が特に変わっていますので、注意して覚える様にしてください。

線分を一本引くと、元のピッチを表す「赤」の曲線の上に、「緑」のピッチ補正曲線が表示されました。

Auto-Tune-8の使い方-ピッチ補正曲線
「緑」の曲線が、ピッチ補正後の音程。補正前の音程カーブをなるべく保ったまま、描き込まれた線分の示す音程にピッチ補正がなされている。

これが補正されたピッチです。

次に、矢印ツールに持ち替え、線分の中心をダブルクリックしてみましょう。

線分の真ん中に、新たなアンカーが出来、線分を曲げる事ができます。

Auto-Tune-8の使い方-線分ツール
線分の角度に従って、補正されたピッチを表す緑のラインも変化している。

アンカーは矢印ツールでもう一度ダブルクリックすると、消す事ができます。

次に、ハサミツールに持ち替えて、線分の中心をクリックします。

すると、中心に重なった2つのアンカーが出来、矢印ツールに持ち替えると、独立した二つの線分として扱う事ができます。

Auto-Tune-8の使い方-矢印ルーツ
2本に分かれた線分は、それぞれ矢印ツールで好きな角度にすることができる。

また、矢印ツールで線分を選択すると、線分毎に、画面のすぐ下にある「Retune Speed」を変更する事ができます。

「Retune Speed」を変える事で、ピッチ補正曲線が大きく変わります。特に「0」にした場合、緑のピッチ補正曲線が、線分とイコールになります。

Auto-Tune-8の使い方-Retune Speed
「Retune Speed = 5」の設定では、緑のピッチ曲線が限りなく線分に近い形になっている。

緑のピッチ補正曲線がカクカクするほど、機械っぽく聴こえ、元の曲線のカーブを保つと自然な結果に仕上がる傾向があります。

再生して結果を聴きながら、目的の設定に近づけていきましょう。

線分の削除

なぜかは分かりませんが、Auto-Tune 8には、一度描いた線分を削除するコマンドはありません。その代わり、矢印ツールなどが並ぶツールバーの右側にある「cut」ボタンを使えば、「切り取る」事はできるので、釈然としないんですが、これで対応するしかありません。手順としては、①矢印ツールで目的の線分を選択してから、②「cut」ボタンを押します。

関連記事:耳に痛いボーカルをミックスで改善する方法

3.曲線ツールを使ってピッチ補正する方法

Auto-Tune-8の使い方-曲線ツール
曲線ツールは、緑の補正曲線を直接描き込む事ができる。

曲線ツールは、ピッチの補正曲線(緑の曲線)を直接画面に描き込む為のツールです。

やり方はカンタンで、曲線ツールを選択して、そのまま画面に描き込むだけ。

この曲線は、線分ツールで描いた線分と同じように、ハサミツールで分割したり、矢印ツールで選択したりすることができます。選択した曲線に対して「Retune Speed」を個別に設定できるという点も同じです。

Auto-Tune 8の「線分ツール」と「曲線ツール」には、次のような違いがあります。

線分ツール
・目的の音程を指定すると、元のピッチ曲線のカーブを参考に、Auto-Tune 8が適切な補正曲線を自動生成してくれる。曲線ツール
・自らフリーハンドで補正曲線を描くことが出来る。

4.ノートツール

Auto-Tune-8の使い方-ノートツール
ノートツールは、一つの音程上にノートを描き、長さや高さを自由に変更する事ができる。

「ノートツール」は、その名の通り、画面上に新しいノート(音符)を作り出せる機能です。

直線ツールと似てますが、ノート(音符)なので、直線ツールの様に、音程から音程をナナメにまたぐ処理はできません。1ノートのターゲットは、1音程である事が大前提です。

その代わり、ノートツールは、ノートの長さを伸ばしたり、縮めたりすることができます。直線ツールでは、このエディットができませんでした。

Auto-Tune-8の使い方-ノートツール
ノートツールで作ったノートは、矢印ツールで左右の端を伸ばす事ができる。

もちろん、ハサミツールでの分割も可能だし、矢印ツールで選択して、音程を変えたり、長さを伸ばしたり縮めたり、「Retune Speed」を変える事もできます。

5.「Autoモード」の補正結果を「グラフィカル・モード」に読み込む

「Import Auto」ボタンを使えば、「Autoモード」である程度補正したデータを、グラフィカル・モードにそっくりそのまま持ち込み、続きを手動でエディットする事ができます。

まず、「Auto」モードで設定を追い込んだあと、グラフィカル・モードの画面に移行し、「Import Auto」ボタンを押します。

Auto-Tune-8の使い方-Import Autoボタン
Import Autoボタン

すると、Autoモードの補正結果がグラフィカル・モードに描写され、それを元に、これまで見て来たやり方で、続きのエディットをすることができます。

Auto-Tune-8の使い方-「Import Auto」
「Import Auto」を押すと、その時の「Auto」モードの設定が、グラフィカル・モードの画面に反映される。

Auto-Tune 8を使いこなそう!

ボーカルのピッチ補正は、やり過ぎるとレコーディングが味気なくなってしまいます。

補正しないと聴けないほど下手なボーカルは別ですが、力量のあるボーカルであれば、多少のピッチのズレは敢えて残しておくというのも、作品を他にない物にする為の手段です。

Auto-Tune 8は身近過ぎると言っても良いソフトですが、本当に必要なのかどうか、見極めてから使う様にしましょう。

また、Auto-Tune 8はこの他にも、タイミングを補正する機能や、ビブラートを一から作り出す機能がそろっています。

クリエイティブに使えば、ボーカル補正以外、たとえば、楽器などにも、多くの使い道を発見できると思います。

ぜひ、使い倒してくださいね◎