Macのメリット・デメリット
メリット1:シェアの大きさ
一番大きいのはこれだと思います。レコーディングスタジオ、ミュージシャン、プロデューサー、マックユーザーであれば、とりあえず「それだけで困る」という事はありません。
たとえば、体が覚えたショートカットキーをそのままスタジオでも使える。困ったことがあれば周囲に簡単に訊ける。ファイルの共有時にフォーマット違いによるトラブルが無いなど、「シェアの大きさによる恩恵」は、思いのほか無視する事はできません。
メリット2:設定や互換性問題からの解放
マックの周辺機器は大体の場合、ドライバーというものが不要です。オーデイオ・インターフェイスもそのほとんどは買って繋げば、すぐ使えます。
場合によっては周辺機器本体ファームウェアのアップデートが必要な事などもありますが、「せっかく買ったのに、繋いでも音が出ない」というあるある問題に見舞われる確率は、かなり少ないと考えていいと思います。
ただ、去年末頃から、「Thunderbolt」というMacでお馴染みの接続端子が、次世代バージョン「Thunderbolt3」に移行する過渡期に入りました。よく調べないで最新型のmacを買うと、あとあと変換アダプターに一万円近い金額が掛かる可能性もあるので、周辺機器の検討には接続規格にも十分注意してください。
メリット3:ソフトのインストールが簡単
Macで何かを新しくインストールする際の場所(フォルダ)などは全部勝手に指定され、関連プログラムも勝手に関連付けられます。インストール手続きに自由が無い分、「何かを部分的に入れ忘れた」とか、「インストールすべきフォルダを間違えた」という人的エラーも起こり様がありません。
オーディオプラグインや、オーディオ再生エンジンの規格も徹底的に統一されているので、アップルにおいては「インストールやその後の設定で悩む」心配はほぼないと言っていいでしょう。
デメリット1:Windowsに比べて相当割高
MacBookにしろiMacにしろ、Macは基本的に価格設定が強気です。CPUやメモリだけで言うと、同スペック帯のWindowsマシンと比べ、10万円~20万円以上の差が開くことも珍しくありません。
例えば、今であればクアッドコアCore i7 CPUを搭載したメモリ16GBの27インチiMacは、一番安くても23万円を超えてきます。確かにiMacは優れたディスプレイも込みなので対等ではありませんが、CPUとメモリに関してのみ言えば、同レベルのWindowsマシンなら10万そこそこで買えます。そして、この価格差はハイスペックマシンになればなるほど開いていく傾向があります。
デメリット2:意外と作りに問題がある
先ほども例に出しましたが、たとえば「MacBook Pro Late2016」というモデルでは、かなりの確率で画像の乱れや、突然のクラッシュが起こるという、ハードウェア上の致命的な不具合が取り沙汰されました。私もたまたまこの時期にMacBook Proを新調しましたが、画面は問題なかったものの、ユーザーログイン画面が延々ループするという現象に見舞われました。
自己解決が無理と判断したので、「ジーニアスバー」と呼ばれるアップルの修理センターに持っていきましたが、結局完全な問題解決には2週間ほどかかりました。問題の多いモデルだったのか、運が無かったのか分かりませんが、高価な割に、根本的な品質問題にも結構出くわすという事は覚えておいて損はないと思います。
特に、アップルストアやジーニアスバーにアクセスしづらい地域にお住いの方は、事前にリスクなどの情報収集をされた方が良いでしょう。
Windowsのメリット・デメリット
メリット1:無料プラグインや無料ソフトウェアの豊富さ
数々の無料プラグインや、無料DAWすらあるというのは、Windows OSならではの長所です。
Windowsの真価は、その高いカスタマイズ性という「自由度」にあります。予算にリミットがあったり、一味違ったものを試したいという方には、ぴったりな選択肢が数多く用意されています。
メリット2:安価
マック製品と比べれば、という事になりますが、価格が圧倒的に安価です。
メーカー製PCでも、10万円前後費やせば一般的な音楽制作においてそれほど不自由しないでしょう。
メリット3:自作による拡張性・メンテナンス性・コスパの圧倒的向上
デスクトップに限った話になってしまいますが、個人的に一番のWindowsの強みと言えばこれです。
いきなり「自作パソコン」と言われても敷居を感じるかもしれませんが、基本的に素手やドライバーだけで完結しますので、プラモデルを楽しめるくらいの忍耐力があれば、まず問題ない程度の難易度です。
パワフルなマシンを組むほど、コスパが上がりますので、たとえば、40万円クラスのMacと同等スペックかそれ以上のマシンを、僅か12、3万円の予算で組むこともさして難しい話ではありません。
また、パソコンで一番壊れやすい部位はストレージ(HDD、SSD)ですが、自作であれば気軽に買い足しや買い直しが可能です。特に、最近はストレージの値段が信じられないほど下落しているので、保険の為に年に一度買い替えたとしても、いくらの出費にもなりません。
自作は思っている以上に簡単なので、ハガキ作成ソフトやら不要なアプリがたくさん入ったメーカー製PCをずっと買い替えていくなら、多少敷居が高くても自作の道に踏み込んだ方が長い目で見て有益です。
デメリット1:使えないオーディオインターフェースがある
たとえばアポジー社は公式サイトで「macOSとiOS向け製品の開発に集中する」基本姿勢を示しており、2017年8月現在、Apogee製オーディオインターフェースの内、多くの製品はウインドウズ環境には対応していません。
また、ウインドウズにはいろいろなバージョンがあります。ウインドウズ7では使えるのに、ウインドウズ10では使えないといった製品も少なからずありますので、使いたいオーディオインターフェースがある場合は、事前に検討しているウインドウズのバージョンに対応している事を確かめた方が良いでしょう。
デメリット2:「音楽制作の環境として向いていない」というウワサ
このウインドウズに付きまとうイメージですが、Windows10前なら確かに事実な面もありました。
これまで、ウインドウズには「レガシーサポート体制」というのがあり、マイクロソフトは旧製品の生産終了後もずっとサポートを続けるという事をしていました。
「古いユーザーを切り捨てない」という事は、旧製品を使い続けるユーザーには当然メリットなわけですが、一方で、開発者には足かせでもあり、新製品の開発に舵を振り切れないという問題がありました。結果、新製品の品質で「一貫性」が損なわれ、犠牲になった互換性や安定性を埋めるために、ユーザー自身が知識を付け、自己解決しなければなりませんでした。
しかし、Windows10以来、マイクロソフトは新しいタイプのCPUを搭載するコンピューターにWindows10より前のOSをインストールできない様にしました。これにより、旧製品を手放したくないユーザーを大いに失望させることにはなりましたが、その代わり、Windows10は今までのウインドウズには無かった「一貫性」と「安定性」を手に入れました。
私の印象としては、実際Windows10に切り替えてからというもの、インストール過程も相当フレンドリーになったし、「ユーザー裁量」による微調整がどんどん不要になっていると思います。安定性も向上し、作業中のフリーズやブルースクリーンと言ったような問題には、10に切り替えて以降、いまだ一度も遭遇していません。
各社のプラグインやDAWもWindows10にまだ対応していないという製品はほとんどないので、Windowsに興味はあるけど、「ならではの問題」や「ウワサ」が気になるという方は、Windows10を視野に入れてみるといいでしょう。