まずオーディオデータから「エラスティック オーディオイベント」を作成する
「エラスティックオーディオ」は、オーディオデータのタイミングを非破壊のまま自由に調整できる機能です。今回は、グリッドから少しズレた箇所のある生ドラムを用意しました。エラスティック オーディオ機能を使い、該当箇所だけグリッドに合わせる作業をみていきましょう。
まず、エディット画面の左側、トラック名などが書かれた部分を見てください。灰色の背景に三角フラスコの様なマークがあるので、その部分をクリックします。
すると、下のようなウィンドウが表示されます。
ここではエラスティックオーディオイベントを作成する際の波形解析に使用するアルゴリズムを選ぶことができます。今回はドラムですので、「Rhythmic」を選択しましょう。
すると灰色だった三角フラスコの様なアイコンの横に「Rhythmic」と表示されます。これで、オーディオデータにエラスティックオーディオイベントが追加されました。
オーディオデータを自動でクオンタイズする方法
ここまでの手順で、生ドラムのオーディオデータに「エラスティック オーディオイベント」が付与されました。ここからは、いよいよ実際にタイミング調整を開始します。やり方は手動でやる方法と、設定を決めて一括で自動的にクオンタイズする方法があります。先に一括クオンタイズの方法を見て行きましょう。
下の画像で選択された範囲を見てください。
何箇所か波形がグリッドとずれた部分があります。この部分に対してタイミング修正を掛けたいので、まず画像のように修正したい範囲を選択してから、ツールバーの「イベント」→「イベント操作」→「クオンタイズ」の順にクリックします。
すると「イベント操作」ウィンドウが表示されます。一番上のプルダウンで「クオンタイズ」が、その下のプルダウンではクオンタイズの対象として「エラスティック オーディオイベント」が選択されていることを確認してください。
真ん中の「クオンタイズグリッド」の項目では、midiでやるのと同じように、タイミング調整の細かさを設定できます。今回は「8分音符」を採用して、その他の箇所は初期設定のままにしておきます。
一番下の「オプション」は、項目前のチェックボックスにチェックを入れたらスライダーを動かせるようになります。今回は何も触りません。
設定が完了したら、「適用」をクリックします。
設定した範囲に対して、自動でタイミング修正がかかりました。矢印の箇所などで、クオンタイズ後の波形のトランジエントがグリッドにピッタリあっていることに注目してください。
手動でのタイミング修正
今度は同様の操作を手動で行う方法も見て行きましょう。クオンタイズで拾い切れなかった部分や、自動ではうまく行かない箇所などでは、手動のほうがよい結果が得られる場合があります。場面に応じて臨機応変に使い分けてください。
まず、三角フラスコ状のアイコン部分で「Rhythmic」を選択し、エラスティック オーディオ イベントを作成するところまでは一緒です。次に、その上の「波形」とかかれた箇所をクリックします。
すると、いくつかの選択肢が表示されます。この中で、エラスティックオーディオイベントに関係しているのは「分析」と「ワープ」です。今回は「ワープ」を選択します。
波形上に「Rhythmic」アルゴリズムを使ってPro Toolsが自動生成したエラスティック オーディオ イベントが表示されました。この「ワープ」表示では、それぞれのイベント線を基準に、オーディオのタイミング修正をマニュアルで行っていく事ができます。
まず、タイミングを直したい箇所にもっとも近い線にカーソルを合わせ、ダブルクリックします。すると線の下に三角形が表示されますので、その両となりの線も同様にダブルクリックして三角形を表示させます。
これで準備が整いました。真ん中の線を動かすと、固定された両端の線の範囲内で、波形のタイミングを自由に動かすことができます。
「Slip」モードで作業をすると、カーソルがグリッドに束縛されないので、やりやすいと思います。
タイミングの調整が完了しました。
イベントの追加とコミット
エラスティック オーディオ イベントの線は、自分で新たに追加することも出来ます。追加の方法は、任意の場所で波形部分の下半分をダブルクリックするだけです。上半分でダブルクリックしても何も起こらないので注意してください。追加した線を消したい場合は、その線上で再びダブルクリックします。
また、調整が終わったあと、結果を新しいオーディオファイルとして書き出すことができます。エラスティックオーディオはリアルタイム処理のため、少なからずCPUパワーを使います。作業が終わったものからどんどん書き出して、CPUの負担を減らしましょう。
方法は、先ほどの三角フラスコ状のアイコンの横で「Rhythmic」を選択した場所をクリックし、その中から「なし-エラスティックオーディオ オフ」をクリックします。すると、下のようなウィンドウが表示されます。
「コミット」を選択すると、エディット済みの状態が新オーディオファイルとなってトラックに反映されます。逆に「もとに戻す」を選択すれば、エラスティック オーディオ イベントの編集情報はすべて失われ、もとのオーディオファイルに戻ります。
CPUの負荷が気にならなければ特にコミットする必要はありませんが、選択肢を多く残しておくと判断が鈍ることもあります。必要に応じて取捨選択し、効率よく作業を進めると良いと思います。